【ブラジルの蒸留酒カシャッサ】

カシャッサって何?

カシャッサ、もしくはカシャーサは
ブラジルで作られるサトウキビを原料とした蒸留酒です。

ラムと同類系のお酒ですが、
製法が違い法律で決められているので全く同じではありません。

■カシャッサの法律

カシャッサはブラジルで生産されたサトウキビを使用。
絞り汁100%を発酵させ、アルコール度数が38~48%に仕上げること。
製品1Lに対して6gの加糖はOK。

この法律以外で製造されたサトウキビ原料の蒸留酒は
『アグアルデンヂ・ヂ・カーナ(サトウキビの蒸留酒)』と言います。

■アグアルデンヂ・ヂ・カーナの法律

アルコール度数38~54%に仕上げる。
サトウキビを原料、シロップ、糖蜜、サトウキビジュースでもOK
製品1Lに対して6gの加糖はOK
カラメルで着色や炭で色抜きもOK
最低でも2年熟成。

歴史

■製糖業の発展

15世紀、ヨーロッパ。
製糖業が異文化交流で伝わるが、サトウキビの育成に適した土地ではなかった。
そこでポルトガル、スペインは温暖で広大な土地を求め海を航海。

ポルトガルはマデイラ島に、スペインはカナリア諸島にプランテーションを建設。

莫大な富を得た両国は、新たなる土地を目指す。

■世界を2分割、教皇子午線とトルディシャス条約

1493年、ポルトガル、スペインが世界を2分割、
互いの勢力図の境界線を教皇子午線と決めた。

この取り決めにポルトガルが不服を訴え、
1494年に境界線がちょっと西にズラしたトルディシャス条約。

境界線がズレていなければ、
今頃ブラジルのカシャッサはラムと呼ばれていたかも知れませんね。

■新大陸の発見

1492年スペインのコロンブスが西インド諸島を発見。
1516年にポルトガルの派遣艦隊がブラジル、ポルトセグーロに到達。

それぞれがプランテーションを建設し、製糖業が始まる。

■カシャッサの語源

プランテーションで働く奴隷達が、
サトウキビジュースが泡立ち自然発酵しているのを発見。

飲んでみた所、気分が良くなり明日への活力となった。
この泡を『カガッサ』と呼んだ。

17世紀初頭になると蒸留機が持ち込まれ、品質の良いカシャッサが生産される。

カシャッサがいつ誕生したかは明確な記録は残っていない。

エピソード

■奴隷

先住民を労働力として扱っていたが、過度な労働により体力が持たなかった。
さらにヨーロッパから持ち込まれたウイルスにより人口が減少。
代わりに西アフリカから奴隷を調達し、労働力として扱う事になった。

■カシャッサの乱

本国ポルトガルはブドウの粕からできる蒸留酒バガゼイラをブラジルで販売していたが、
カシャッサの需要が高まっていた為、バガゼイラの価値は低下。
ポルトガル政府はカシャッサの製造禁止令を出したが、カシャッサの需要は延びた。

再び流通禁止令を出すが、取締は難航。
1600年カシャッサ製造に課税をかけた、この対策に反乱が起きたが軍によって鎮圧。

だが何度も反乱を繰り返しポルトガル政府は製造を許可、
反乱が激しかった為、詳しい文献などが残っていない。

製造を認めた1661年9月13日、カシャッサの日となった。

■独立運動の英雄『チラデンチス』

1792年4月21日、ブラジル独立運動の先駆者チラデンチスが処刑された。
アメリカの独立やフランス革命の影響でポルトガルからの独立『ミナスの陰謀』を計画。
だが密告により失敗、首謀者は流刑、1番身分の低いチラデンチスが全ての罪を被らされ絞首刑。
さらに体をバラバラにされ、各地へ晒された。
だがこれが逆効果だった、植民地に芽生えた独立の欲求を抑えることはできなかった。

そして彼が最後に言ったセリフ
『独立の乾杯はワイン(ポルトガル)ではなく、我々のカシャッサだ』

民衆の心を掴み、一般大衆に愛飲された、彼は現在英雄として称賛されている。

■独立

1822年9月7日ポルトガル王室の人間ドン・ペドロ1世により独立を果たす。
独立後、ブラジル王侯貴族はカシャッサを飲むようになった。
ブラジル人ではなく、ポルトガル王室の人間による独立。

奴隷の飲み物から一般人へ、貴族へ、王族へと飲まれるようになったカシャッサ。
大出世です。

製法

合計で7つの工程があります。

“収穫、洗浄、圧搾、発酵、蒸留、貯蔵、熟成”

①:収穫

サトウキビの刈り入れは糖度がピークに達する乾季5月〜12月。
刈り取ったら断面から加水分解と酸化が始まってしまうので、
24時間以内に洗浄、圧搾します。

②:洗浄

圧搾をする際に水やお湯を使い分けながら洗浄します。
これによりジュースを効率よく抽出することが可能となります。

③:圧搾

抽出の終えた繊維のことを『バガス』と言います。
バガスは燃料や紙、資材、肥料として再利用されます。

④:発酵

酵母の働きにより糖を分解して、炭酸ガスとアルコールを生成します。
この段階で発酵由来の芳香成分が形成されます。

蒸留所によっては使用する酵母が違うので、仕上がりはどれも異なった香りになります。

発酵後のアルコール度数は7~9%です。

⑤:蒸留

アルコールの沸点は78.325度、水は100度です。
この沸点を利用して水とアルコールを分離、凝縮します。

蒸留機には2種類あります。

【単式蒸留器】
液中の不要な匂いを抑制し、
原料の風味を生かした個性ある蒸留酒に仕上がります。

【連続蒸留機】
単式より効率よく蒸留ができ、大量生産に向いています。
高いアルコール度数を抽出することが可能となり、
クセの少ない洗練された仕上がりになります。

⑥:貯蔵

樽はブラジルの特産木から作られた樽が使用されます。
種類は40種類以上です。

種類、容量、期間、事前処理、保存条件、状態。
様々な要素が仕上がりに影響を及ぼします。

樽の焼き入れ
樽の内側を直火で焼き、
樽材に含まれる成分を木の表面に引き出しアルコールに溶け込ませる作業です。

⑦:熟成

・プーラ:熟成無し、蒸留後瓶詰めorステンレスタンクで数ヶ月休ませてから瓶詰め。

・アルマゼナーダ:3ヶ月〜無期限、700リットル木樽で熟成。

・エンヴェリェシーダ:最低1年熟成、700リットル木樽で熟成。

・プレミウム:1~3年間熟成

・エクストラ・プレミウム:最低3年間熟成
英語ではレゼルヴァ・エスペシャル。


ラムと似ていますが使用する酵母や樽の材質、熟成期間によって仕上がりが違うのが
味わいの楽しみでもありますね。

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ABOUTこの記事をかいた人

『バーを開きたい』という目標ができ、会話力、身だしなみ、語学を学ぶ為日々取り組んでいます。 4年半バーで働いた後、派遣社員としてアパレルで働き現在はマンチェスターへ語学留学中です。 自分が独立するまでの道のりや、学んだ知識、経験を発信していきます。 よろしくお願いします^^