テキーラって何?製法と歴史についてサクッと解説

テキーラとは(Tequila)、、、

テキーラとはアガヴェと呼ばれるリュウゼツランの仲間を原料としたメキシコ原産の蒸留酒。

語源は『切ることのできる場所』『作業場』の意味を持つ。
火山の熱によってできた黒曜石が取れる場所、
火山の名前がテキーラとなり町の名前になり、飲み物の名前となった。
さらに深堀すると、一説によれば火山の麓にティクイラ族が住んでいたことが由来される。

アガヴェの観察行ってきました↓参考にどうぞ↓
アガヴェ観察 in 伊豆シャボテン公園

元々はメスカルと呼ばれていました、古い呼び名だとメルカルワイン。兄弟みたいな感じです。
メキシコ各州で作られていた、その中でもテキーラ地方のメスカルが人気でした。

原産地呼称を設け、テキーラ村で作られたアガヴェを栽培、
テキーラを製造という特定の条件を満たし認められたものをテキーラ名乗ることができます。

ボトルにはCRT(テキーラ規制委員会)と記してあり、
これがないものはテキーラと名乗ることはできません。

原料が51%残りは別の糖蜜を使用し製造されたものをミクストテキーラと呼びます。
糖蜜は長期保存が可能ではありますが、
酸化して品質がよろしくないものも中にはあります。

よろしくない糖蜜を使用した場合のミクストテキーラを飲むと頭痛を引き起こします。
ですが決してミクストが悪いというわけではありません、、

ミクストテキーラは安価に手に入ることができたので、
ローカルスピリッツであったテキーラの普及に役立ちました。

2008年にCRT(テキーラ規制委員会)はミクストも国内で管理することとなった、
今ではミクストでも高級ブランドが存在します、
それがペルノリカールのオルメカです。

「非常に上質なミクストもあれば粗悪な100%アガヴェテキーラもある」
とペルノリカール・オルメカ蒸留技師ヘレス・エルナンデスは断言している。

原料のアガヴェを100%使用したものがプレミアムテキーラです。
現在ではラベルにしっかりとアガヴェ100%と記載されています。

メキシコでは100%が当たり前だったので記載はしていなかったそうなのですが、
品質と信頼を得る為に記載されたそうです。

プレミアムテキーラへの関心を持った先駆者は、
パトロン、ポルフィディオ、ミラグロ、カサノグレなどのブランド。

まとめると前提知識としてテキーラは2種類あります。

  • プレミアムテキーラ 100%アガヴェ
  • ミクストテキーラ  51%アガヴェ、残りは別の糖蜜。

出来上がるまでの工程

6つの工程
『栽培、収穫、加熱、発酵、蒸留、熟成』

栽培、収穫

アガヴェが育ち目標の糖度に達するまで、なんと7年かかります。
植物としての生殖可能な時期7年以降に花茎が育ち
短期間で種子を作り、唐突に枯れてしまいます。

これを管理するのが「ヒマドール」と呼ばれる職人。
受粉、交雑を防ぐ為、ヒマドールはこの花茎を切る作業を「去勢」と呼びます。

花茎を切らないと花に糖分が持ってかれてしまうので
切り取ることでピニャ(球茎部)に糖分を残すことができます。

またアガヴェの葉の先端を「バルベオ(切る)」することでもピニャに糖分が蓄えられます。

アガヴェの状態を管理し、
時期になったら「コア」と呼ばれるスコップみたいな棒の先端に丸い刃物がついた道具を使用します。
この借り入れも職人技、ピニャに残る葉の根元の量で仕上がりに大きく影響してきます。
葉が無ければスッキリとしたテイストに、残っていれば苦味や辛さのあるテイストになります。

ピニャの芯の部分コゴージョ、
焦げやすく苦味や独特の臭みがしてしまうので多くの蒸留所は取り除きます。
中にはあえて残す蒸留所もあります。

ちなみにピニャは1つ30kgあります、中には100kg級のものもあります。
重さは栽培年数により左右され一般的な7年物は50kg程です。
刈入れが終了したら蒸留所へ。

加熱

一般的な加熱法ピニャをレンガ製のオーブンで蒸し焼きにする、
36時間蒸し焼きにすることでアガヴェから糖度のある液体を集めることができる。

メーカーによっては高圧釜を使用して4、5時間で蒸しあげするところも。
蒸しあがったピニャをローラーにかけ糖蜜を抽出。

この糖蜜は「アガヴェシロップ」と呼ばれ現在では健康食として注目されています。
砂糖の1.5倍甘さがあり、整腸作用と血糖値が上げにくい効果があります。
日本でも売っているので是非お試しください。

加熱には4種類あります。
1:マンポステラ 
レンガ製のオーブンで蒸しあげる。36、48、72時間など、
とにかく時間がかかる。

2:アウトクラベ 
圧力蒸気釜で蒸し上げ。4、5、8時間など、
効率はいいが伝統的ではないので批判する人もいる。

3:酵素分解 
アミラーゼと呼ばれる酵素群を使用し糖化。
日本の技術みたいです。

4:タマテド 
大きな穴にピニャをぶち込み下から直火で焼き上げる。
仕上がりはスモーキーになる。
※一般的には1、2の方法で加熱される、3、4は特殊です。

破砕、搾汁

4つの方法
1:タオナ 
古典的な巨大回転式石臼を使用。
アガヴェの繊維を断ち切ることなく搾汁できる。
ラムでいうトラピチュですね。

2:シュレッダー 
粉砕機を使用。
効率的だがアガヴェの繊維を断ち切ってしまう。

3:ディフューザー 
洗浄圧搾機を使用。こ
れも伝統的ではないので批判されている。

4:フランケンシュタイン 
最新鋭のタオナを目指して作られた。
現在使用している蒸留所は不明。情報ある方教えてください、、。

この工程で出る産業廃棄物、
繊維(バガセ、バガス)はバイオエネルギー原料として利用されます。

※考古学者によればこのバガセが洞窟で発見されており、
蒸したピニャが1000年前にも食べられていたとされている。

発酵

3つの方法
1:自然発酵 
ザイモナス菌によるバターのような香りの効果を得られる。

2:酵母を加えた発酵 
36時間前後発酵。使用される酵母や発酵時間でテイストやフレーバーが左右されます。

3:酵母と発酵促進剤を加えた発酵 
12時間程の短時間発酵。
市販の酵母を使用するメーカーもあれば、
エラドゥーラ蒸留所のようにアガヴェから採取した酵母を使用するメーカーもある。

※ちなみにメーカーによっては係の人が発酵槽に入り攪拌する蒸留所もあります、
人間の肌に寄生している菌で得られる影響もあるんだとか、
ちょっと抵抗はありますが最終的には蒸留するので問題無いですようです。

さらに余談なんですが僕が1番好きなお酒はエラドゥーラです。

蒸留

2種類の方法
単式蒸留 
不純物が入り時間もかかるが、
原料の風味と独自の豊かなフレーバーのある仕上がりになる。

連続蒸留 
効率的に蒸留され、
洗練されたフレーバーの少ない純粋なエタノールに仕上がる。

100%アガヴェテキーラはほとんど単式蒸留で作られています。
最低2回の蒸留が義務付けられています。

1度目の蒸留でアルコール分20%、2回目の蒸留で50%に到達します。
中には3、4回蒸留するメーカーもあります。

最終的に35〜55%に調整されます。
蒸留後フィルターに液体を通し、固形物を取り除きます。
回数により仕上がりに影響していきます。
多ければクリアでさっぱりしたテイストに、少なければオイリーでボディのあるテイストに。

熟成

  • ブランコ 熟成無し、もしくは60日以内。
  • レポサド 2ヶ月
  • アネホ 最低1年 600L以下のオーク樽
  • エクストラアネホ 最低3年熟成 600L以下のオーク樽

ウイスキー、ブランデーに比べれば短いです。
ですがメキシコの寒暖差の激しい気候により年間で10%の蒸発により、
熟成スピードはスコットランドの5倍の速度。

何よりアガヴェが育つのに7、8年かかっているので最低でも8年かかるということになります。
瓶詰めされた時点ですでに8年ものです。

アガヴェ本来の風味や味わいを楽しむ為、ブランコを好む人も多いです。

メーカーによっては蒸発を防ぐためカバーで密閉したり、
超音波による気泡を入れてみたり試行錯誤されています。

そしてボトリングされたものは瓶内熟成するのか?という疑問がでてきます。
一説によれば瓶内熟成はすると提唱されています。
酸素に触れていない(一度も開けていない)ボトル内で有機化合物同士が反応し、
分子レベルで分解されていきテイストが変わるそうです。

これを熟成と捉えるのか劣化と捉えるのかはいろんな意見があると思います。
※個人の感想ですが、僕は長い時間が経過したウイスキーとテキーラを奇跡的に頂いたことがあるのですが、
アルコールは抜け旨味や辛味だけが残っていました。
口開けしていなくても時間が経てばアルコール分は抜けていくようです。
美味しかったのは確かなんですが、
はじめを知らないので変化の違いはわかりませんでした。

歴史

古代

アステカ族マヤ族の間では豊かな食生活を築いていました、
その中にリュウゼツランを原料としたプルケと呼ばれる醸造酒がありました。
西暦200年頃確実に存在していたという記録が石板に書かれています。

近世

スペインがブランデーの酒造法を持ち込み、プルケを蒸留したメスカルが誕生しました!
ですが、現在では同時期にフィリピンで使用されていたヤシ酒を作る為の蒸留器が持ち込まれ、この蒸留技術でメスカルが誕生したと言われています。

現世

1958年にアメリカでTheChampsが『Tequila』という曲リリース。これが世界中でバズり一気に広まりました。
1968年メキシコオリンピックでさらに加速。
1974年テキーラ原産地呼称成立。
1977年以降メキシコ以外でテキーラを作ることが禁止される。各蒸留所にNOMナンバーが明示される。
1980年代、カビや細菌による病気で被害にあった。
1990年ハリウッドでプレミアムテキーラのムーブメントが起きさらに人気に。アガヴェ不足を引き起こした。
1994年メキシコ以外でメスカルを作ることが禁止される。
2007年オーガニックテキーラに初めて認定された、テキーラブランド4コパス(クアトロ・コパス)
1994年に設立したCRT(テキーラ規制委員会)製造からボトリング、品質管理と偽造防止、
アガヴェ由来の糖の含有量、製品の検査、あらゆる条件を満たしたものがCRT認定でテキーラと名乗ることができる。

ではCRTが無いといけないのか?ダメなのか?という問題でもないようです。
厳密な規定があるから安定したクオリティを保証できますが、これは縛りとも捕らえられます。

その例としてあげるのが『ポルフィディオ』です。

1991年にオーストラリア人マーティン・グラッスルがメキシコでテキーラ業界に参入。
新技術による製造法、ヨーロッパでの酒造ノウハウを屈指して、
今までの伝統や概念をぶっ壊し信念のテキーラを作り多くの愛好から絶賛されました。

だがこれを面白くないと思う人達もいました、
地元メーカーや代々テキーラを作ってきた人達のプライドを傷つけてしまったのです。
ある政府機関にボトルの底にあるサボテンは
メキシコに対する侮辱だと告訴され裁判に、結果は無罪だったが状況はさらに悪化。
ボトルを燃やす者、新聞では犯罪者扱い。

さらにNOMナンバー規定違反とみなされ国際指名手配になり、2003年パナマで逮捕。
やり過ぎの気もしますが、それだけメキシコ人がテキーラを愛している証拠でもあり、
その文化をパッと出の外国人にプライドを傷つけられたとなっちゃ黙っていられなかったんでしょう。

グラッスルは「自信が傲慢で無神経だった、だが人と協力するのは苦手、やりたいようにやる」と語っています。
ボトルにテキーラと記載されていないですが、
「100%アガヴェスーパーハリスコ」と新しいカテゴリーで記載されています。

自分の信念と昔ながらの文化どちらも大切だと思うんですが、
歴史は勝者が作るってことですね。
どちらも魂(スピリッツ)が込められているのは間違いないです。


最後に
日本ではあまりイメージの良くないお酒かもしれませんが、
品質が良く作り手の魂が込められた最高のお酒であり、
この長い食歴によってできたメキシコ料理とテキーラのマリアージュはまさに至福の極みです。
メキシコに移住しようかな、、笑

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    『バーを開きたい』という目標ができ、会話力、身だしなみ、語学を学ぶ為日々取り組んでいます。 4年半バーで働いた後、派遣社員としてアパレルで働き現在はマンチェスターへ語学留学中です。 自分が独立するまでの道のりや、学んだ知識、経験を発信していきます。 よろしくお願いします^^